2010年 表紙

 私たちは今、まことに生きづらい時代に直面しています。アメリカ発の金融危機は全世界を巻き込み、日本経済もまた危機的な様相を呈しています。企業倒産が急増し、地方の大きな工場が閉鎖されるなどして、職場を失い、解雇される人が後を立たず、社会全体が不安にさらされています。このような社会状況の中で、ますます地域格差と貧困が広がり、公的保育など社会保障制度全般の後退が進められています。子育て不安や離婚の増加、「孤食」に見られる食生活の乱れなど、家庭崩壊が更に深刻化することが懸念されます。
  カレンダーに掲載されている子たちの世界に、じっと目を注いで下さい。そこには、社会の不安や深刻な社会的な状況をものともしない、輝く命が息づいているではありませんか。ハンディを持っている子も、家庭の寂しさを抱えた子も、土と水と太陽と仲間の中で存分に遊び、自然を求めて野山を駆け巡っています。おいしい食事を食べ、早寝早起きの生活リズムを整える努力をしながら育った子たちの生活が表れています。5歳児になって始まる他園との交流合宿の中で、多くの仲間と交わり、素敵な文化に出会い、多くの体験と感動を内面化していく力強さには驚くばかりです。
  子どもたちを育てているはずの私たち保育士が、むしろ生命力溢れる子どもたちからいつもエネルギーをもらっていることに気づかされます。それだけに私たち大人は、保育者集団、集団として「どの子も育つ」保育に真剣に取り組む責任を感じます。子どもが安心して育つ家庭・保育園・地域・社会になることを願って保育カレンダーを編集しています。一枚一枚の子どもの絵が、子育ての波紋となって全国各地に広がりますように。

▲6歳2ヶ月の女の子(5年7ヶ月保育) はなのわ保育園(茨城県ひたちなか市東石川2632 TEL 029-273-0493 園長 坂主 恵子)

 はなのわ保育園の前身は、1962年に誕生した私立幼稚園でした。その後、共働きの親たちの願いから夕方までの保育を設けました。その一方”公的補助を!”と県内の無認可保育園と一緒に運動を続け、1973年私立認可保育園となり、幼稚園の一部に小さな園舎を建て0歳児からの保育を始めました。1979年に保育園園舎を現在地に移転し、”次代の主人公となる人間の土台づくり”を保育の目標に掲げ、多くの保育者とともに学びあいながら今日にいたっています。
  この子は生後7ヵ月で入園。小さい頃は、外遊びよりままごとや室内で過ごすことを好みました。初めてのことに体を強ばらせてしまうことも多々ありました。年長になり、毎日のリズム運動では、スピード感やしなやかさを苦手としていましたが、風呂上がりに柔軟体操をして体を柔らかくすることを自分で決めて取り組みました。朝の雑巾がけはホールのはじからはじまで手を抜かずにかけ、それらをやり通すことで、自分に自信をつけてきました。後半はあやとりや水彩画に熱中していました。この絵は『錦の中の仙女』のお話の一場面を描きました。

発行:保育カレンダー編集委員会 
福井県福井市西二ツ屋町9-8(鷹巣ひかり保育園内) 
TEL 0776-86-1066 FAX 0776-86-1067 

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