2012年 表紙

 「まど、あけてもいいの…?」「そとにでてもいいの…?」
 地震発生から3 ヵ月。福島の子どもたちが宮城にやってきた。「いいよ」というと裸足で出ていき、水にたわむれ、土で遊ぶ。それを見ていた園長は、そっと目頭を押さえて「これが自然なんですよね」と一言。室内にいなければならなかった3 ヵ月に渡るつらい日々の生活が、沸々と蘇るのでしょう。
 3月11日の原発事故は、その日の内にメルトダウンを起こし、大量の放射性物質を外に放出していた。その放射能が呼び起こす危険な状況に、子どもたちを預かる保育所や幼稚園の大人たちは何をどうしてよいかわからず、自然の中で遊び、育つことを大切にしてきた保育士は悩み苦しんでいる。"わずかな期間でもその地を離れ外で遊ばせたい"と交流お泊り保育を宮城の地で開いた。
 お泊り保育最後の日には、全国保育実践交流連絡会の仲間の保育士たちから寄せられた義援金によって上演された『龍の子太郎』を観劇し、「旅」と「多くの人々との出会い」が、太郎を強く賢く成長させたというお話に自分の姿を重ね合わせて帰途についた福島の子どもたち。
 「核」兵器のために作られた原子技術、未完成な技術を無理に使用したために起こった理不尽な事故。何の責任もない子どもに影響を与え、大人として本当に申し訳なく思う。「これからは、放射能によって傷つく人たちのないように、賢く『世』を選択していくからね」と誓う。
 一方でこの大震災のさなか、保育制度を変えようと虎視眈々と法案通過を狙う政府の姿がある。理由は一つ。保育にかかるお金を安くするためという「経済性」だけ。そこで生活する子どもや働く親のことは一つも考えていない。この制度になると、子どもは母の働く時間に合わせた保育時間にさせられ、保育所では4時間生活する子、6時間生活する子、延長保育で12時間生活する子がバラバラに登園してくる。子どもの仲間関係はどうなってしまうのであろう。親は「保育が必要」と認定された後は、自分で保育所を捜さなければならない。今でさえ待機児童問題で入所することさえ困難なのに、親の苦労は目に余るものがある。保育所にあっては直接入所、保育料の直接徴収が始まり、生活苦による未納問題など、運営が困難になることは目に見える。今回の制度改定は誰にとっても良いことはなく将来に禍根を残すことになるであろう。
 "子どもは元気に外で遊び" "家族は仲良く不安のない生活を送り" "子育ては地域育て" と考え、手をつないだ社会を築きあげていくことこそが、人類の未来を創っていくと考える。
 この「保育カレンダー」は、その方向を園を挙げて求め続けている全国の園の子育てが紹介されている。是非手に取り、見て、読み、部屋に飾ってほしいと願う。(2011.6.20記)
錦保育園 園長 一村則廣 宮城県登米市迫町佐沼字錦132−2
▲6歳5ヵ月の女の子(生後2ヵ月入園) くるみ共同保育園
 (大阪府羽曳野市壺井508−1  TEL:072−957−3282
 園長 宇山 喜久子)
 設立41年目を迎える無認可の保育園です。今年の年長は5人で、0歳児クラスで女児3人に、3歳児クラスで女児と4歳児クラスの冬から男児(広汎性発達障がい)が加わりました。年長の前半は男児との関わりでトラブルも多くありましたが、秋からは5人の仲間意識が育ち、相談ができる集団となりました。
 この子は、母乳をよく吐き生後18日目に幽門狭窄の疑いで入院、1 ヵ月半で髄膜炎の疑いで入院し、乳児期はよく熱を出し薬づけの生活でした。人見知りがきつくしかめっ面が多く、3歳で左目の弱視がわかり眼鏡での矯正となりました。
 この子が元気に育ったのは、園での豊かな食事と遊びはもちろん、早寝早起き、朝の散歩、強い刺激(テレビ)の排除などに気をつけたことが大きかったと思います。年長になってからは、忙しい両親に代わり他の年長の親が山歩き等に誘ってくれ "みんなの子をみんなで育てる" 親集団に支えられ、充実した6歳児期を過ごすことができました。卒園期は描きたいことがいっぱいあり、体験したことやお話で印象に残ったことを楽しんで描いていました。この絵は『そんごくう』のお話で鳳凰になった場面です。

発行:保育カレンダー編集委員会 
福井県福井市西二ツ屋町9-8(鷹巣ひかり保育園内) 
TEL 0776-86-1066 FAX 0776-86-1067 

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