2019年 表紙

 近年、社会は急速に変化し、子どもの育つ環境は大きく変わってきました。中でも情報化社会がめざましく高度化し、ここ数年で、乳幼児の保育・教育現場にもタブレットや見守りロボットが導入される時代になってきました。そしてスマートフォンなどの新メディア、人工知能(AI)、仮想現実(VR)などの情報技術が子育て環境を一層変えていくのではないかと危惧しています。
 メディアの危険性について、2004年に日本小児科医会は「子どもとメディアの問題に対する提言」の中で、メディアとの接触によって運動不足、睡眠不足、コミュニケーション能力の低下が引き起こされる等、子どもへの悪影響を訴えました。また授乳中や食事中、言葉が出始める2歳まではテレビやビデオの視聴は控えるようにといった具体的な提言も盛り込み、対応の緊急性を社会にアピールしました。
 さらに深刻化している現在、パソコンやスマートフォンなど生活の中にオンラインのメディアが入り込み、朝起きられない、昼夜が逆転する、イライラして物に当たる、食事をとらないなど生活が崩される依存症が世界各国で問題化しています。WHOは2018年6月18日、オンラインゲームなどのやり過ぎで日常生活が困難になる「ゲーム障がい」を新たな疾病に認定しました。
 私たち大人は子どもを取り巻く状況が悪化する中で、日常のオンライン環境から離れ、人間の土台が育つ乳幼児期に、人との関わり・生活・自然環境を豊かにしていかなければなりません。
 私たちの園では、風通しの良い部屋で赤ちゃんと目を合わせながら話しかけること、赤ちゃんマッサージや体操、太陽の下で裸足で土や水や自然に触れながら遊ぶことなど、人との交流や豊かな生活環境を通して五感を育てる保育をしています。また仲間と遊び、食べ、眠るという生活を充実させながら、どの子も育つよう保育者や保護者、地域とともに学習や交流を続け、多くの方と力を合わせています。全国の様々な園の様子や次ページの特集を是非ご覧いただき、この保育カレンダーを子どもたちの明るい未来をつくるために役立てていただければと思います。
▲6歳7ヵ月の女の子(5年2ヵ月保育)

つくしんぼ保育園
(茨城県日立市諏訪町3−12−19 TEL 0294−37−4278  園長 坂本 眞澄)
 日立市は山と海に挟まれた細長い町です。つくしんぼ保育園には裏山があり近くには川も流れ、春秋冬は山登り、夏は川遊びと0歳の時から自然と触れ合う生活やあそびを大切にしています。
 年長になると豊かな経験を求めて園バスで出かけ、山登り、川あそびや磯あそび、米作りや果物狩りなど楽しい体験をしてきました。市内にある助川山は、数年前に起こった山火事の後につくられた『保全くらぶ』が、市の職員と一緒に山を整備してくれました。そのおかげで、子どもたちは安心して山登りを楽しむことができます。この山に『保全くらぶ』のおじさんたちと、春は草花の芽吹きを見たり、夏は沢ガニとりを楽しんだり、秋は真っ赤に染まったもみじの木の下をくぐったり、冬は霜柱をザクザクと踏みしめて歩いたりと、四季の移り変わりを全身で感じながら年間10回以上登りました。前回歩いた時との違いや変化、新しい発見に夢中になり「もっと知りたい」「よく見たい」という意欲が大きく育った子どもたちでした。
 地域に根ざした保育を目指し、昔ながらの伝承あそびを教えてくれる“飛行機おじさん”“凧おじさん”“民話のおじさん”など多くの方とふれあいながら関わりを大切にしてきました。
 この子はお話を引き込まれるように聞く子で、卒園式前日に『黄金のかもしか』を読んでもらうとすぐ「このお話の絵を描きたい」と描き始め、思いを込めて色も丁寧に染め上げました。

発行:保育カレンダー編集委員会
愛知県豊川市市田町原山97・98(恵の実保育園内)
TEL 0533-65-9803 FAX 0533-84-9777
ホームページ http://www.hoiku-c.net/

保育カレンダー作成に参加している全国の保育園、幼稚園、
認定子ども園を知りたい方はホームページを御覧下さい
定価1200円

<<戻る