2009年9月



   
▲4歳2ヵ月
入園間もない頃で、こだわりが強かった
  ▲4歳10ヵ月
担任と2人の散歩の日々を経て、仲間とすごすのが楽しくなってきた
  ▲5歳9ヵ月
様々な感情がでるようになり、友達にも「イヤだ」と自分を主張できるようになった頃

▲6歳10ヵ月の男の子(3年保育) つくしんぼ保育園
(茨城県日立市諏訪町3−12−30 0294−37−4278  園長 岩間和子)


 山と海に挟まれた細長い地形の日立市に保育園はあります。園庭は狭いのですが、裏山があり近くには川も流れ、春、秋、冬は山登り、夏は川登りと自然の中での生活を大切にしています。

 この子は、生後8ヵ月頃から日中の大半をテレビの前で過ごしました。2歳2ヵ月で言葉の遅れの指摘を受け、2歳4ヵ月で広汎性発達障がいと診断されました。3歳過ぎから、単語は出るが独り言が多くてやりとりにならず、興味のないことは全く耳に入らない、泣き・かんしゃく・奇声・爪かみなどの自傷行為、物を並べることの強いこだわり、初めての場所・初めてすることをとても嫌がる、道路への飛び出しなど、母はどう関わったらいいかとても困惑していました。市の幼児療育センターの紹介を受け、3歳11ヵ月で入園してきました。

 入園した頃は、呼びかけに振り向かない、目が合わない、独り言で会話にならず、イス・マジックを並べる遊びにこだわり、水道の水さえも微妙な水量を調節して出してまわるなど、目についたものを次々と並べていました。周りの子たちが少しでも動かすと、泣き叫んでいなくなる状態でした。小児神経内科医、言語療法士など、専門家から「保育園のなかに大好きな保育士を作ることが大切」とアドバイスを受けました。担任保育士は、毎日雨の日もカッパを着て2人で散歩することを日課としました。始めのうちはずっとマラソン状態、立ち止まるのは鉄塔・信号・住所表示の数字、特に信号では満足するまで30分位も「赤! 青!」と言いながら眺めていました。コースの変更をいやがり、テレビコマーシャルの言葉をずっと言いつづけました。夏の終わり頃には走らず歩くようになり、後ろを振り向いて保育士の存在を確かめ待ったり、声掛けに反応し花や虫を見たり触ったり、コースの変更もできるようになりました。11月頃にはクラスの子たちと一緒に散歩できるようになり、他の子の模倣もするようになり、2月にはクラスのみんなと一緒にいることが増え、おいかけっこで「キャッキャッ」と笑うようになりました。4歳児クラスでは、リズムに自ら参加する事や、友達との関わりの中でケンカのできる場面を大切にしました。

 年長では、自分で決め1人でやることを多くし、できたことはたくさん誉めて自信を持たせることを大切にしました。友達と過ごすことが楽しくなり、みんなのすることには何でも挑戦し、ケンカも出来る関係となりました。他園との交流をとても楽しみにし、仲間の中でがんばれることや「ステキ」と言われることが嬉しくて自信になりました。3月の100人を越す年長合宿ではグループの一人ひとりに名前を聞いたり、一緒に笑い合ったりリズムをしたり、こまが回らないでいる友達を励ましたりと、人の気持ちを考えて関われるようになりました。

 この絵は『花さき山』のお話の絵です。山は交流山登りで登ったことを思い出し、一方は「男坂」、もう一方は「女坂」、そして「やさしい事をすると花が咲くんだよね」「ほら今赤い花が咲いたよ」などと言いながら色も心をこめて塗りあげました。